ロードムービー/辻村深月

ロードムービー

ロードムービー

 泣いた。表題作の「ロードムービー」の演説には、ぼろぼろ泣いた。
 しかも驚いた。こんな仕掛けがあったなんて。驚いて、そしてまた、感動してしまった。
 どのお話もほんとうによかった。懐かしくて胸が温かくなるのだ。
 『冷たい校舎の時は止まる』の過去と未来の話である。読み終えてみると、あの高校時代からずいぶん経ったんだなあ、と思ったり、こんな小さい頃があったんだなあ、と思うのである。
 しかし、何の先入観もなく読んでみると、登場人物が謎だったり、その後を知りたいと思う場面がでてくると思う。そんな、少々物足りなかったな、と思う人はこの後に『冷たい校舎の時は止まる』を読んで安心すればいいのである。ここにみんながいる、ということに気づくはずだ。そして、ああ、やっぱりあの二人は結婚するのね、と嬉しくなるのである。
 お薦め。