第四の闇/香納諒一

第四の闇

第四の闇

 ★★★
 インターネット心中で妻を失い、自宅マンションでネットの古本屋を営んでいるアル中の男が主人公。彼は、ネットで集団自殺をはかった者たちを追っていた友人のライターと会う約束をしていた。その友人が、自宅で四肢を切断され胴体だけ持ち去られていたのだ。このバラバラ事件の真相を明らかにするために、彼は同じ第一発見者であり、同じような闇を抱えた十代の若者達と行動を共にしていく。
 久しぶりの香納諒一である。最近の作品を読んでないので香納にどんな変化があったのか知る由もないが、ハードボイルド作家として愛すべき作品ではなかった。もちろんミステリーを愛する読者なら、文章力、構成力が抜群でもありプロットも十二分に練られたこの作品は、上質なエンタメ作品として評価するだろう。ただわたしには物足りなかった。それが残念である。
 テーマ自体は魅力的であり社会性もあって、興味深くも読み進めることができる。なので、タイトルでもある第四の闇が何であるのかを考えながら真相を追ってゆくのは面白かった。だが、わたしが香納に求めていたのは上質なハードボイルド作品でありエンタメ作品である。ところが、妻に死なれた男が酒浸りになり、最後の最後までぐちぐちと不幸な状況を嘆いているばかりの話では詰まらない。どんよりと暗い主人公には愛想を尽かすしかなく、くどくどと同じ状況が繰り返されるのにはぐったりなってしまった。
 だから、二転三転する展開やどんでん返しにも、なるほど、と感心しても驚愕するほどのインパクトはなかった。そのため、ミステリー部分でも首を傾けざるを得なかった。
 痛快さもなく、愉快でもなく、サプライズもない作品となると、肝心の物語にも楽しみを見つけられず、エンタメ作品としても失敗だったと言わざるを得ない。主人公のキャラの痛さや事件の異常性が、テーマに必要だったとは思うものの、それを押し切るれるものがないというのは、やはりいただけない。希望のないやるせない思いだけが残ってしまったということか。読後感はよくなかったということで、あまり好きな話ではなかった。