運命の日/デニス・ルヘイン 

運命の日 上 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

運命の日 上 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

運命の日 下 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

運命の日 下 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

 1019年のボストン。ついに警官たちはストライキを決行する。暴動が起こり、ボストンは大混乱に陥る。この運命の日、物語は一気に怒涛のクライマックスへと加速する。
 しかし、読み終えてみて感じたことは、いったい自分は今まで何を読んできたのかということ。結局、主人公たちが得たものは、なんだったのか。素晴らしいもののように描かれているが、失ったもののほうが遥かに大きく思えて、壮大な物語を読んできた割に、達成感も少なく、じんとくるものがなかった。
 たとえば、普通に生きている黒人を、何の感情も交えずにいきなり銃で撃ち殺す警官がいる。吐き気を催す場面だし、この時代の人種差別の酷さを垣間見る思いがする。しかし、実は全篇にそれほど痛ましい描写があるわけでもなく、おぼろげに感じる程度なのだ。このように、物語の中に、真に迫るリアリティさを感じないのであれば、やはり自分は歴史小説を読む資格がないのだろう。