- 作者: 垣根涼介
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/09/01
- メディア: 単行本
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『君たちに明日はない』の続編の連作短編集。前作がかなり好きで面白く読んだので今回も楽しみにしていた本書。で、今回も期待に違わず面白かった。やっぱり垣根さんはいいね。
どれもほろりとする人情話風でよかったのだが、表題作が一等面白かった。いい話だ。
リストラ請負会社の話なので、リストラする相手との面接の場面がどうしても多くなってどんよりした気分になるのだが、そこは主人公・村上真介のキャラの明るさと思いやりでずいぶん救われた。読んでいて気持ちが良い。とくに表題作の「借金取りの王子」には泣かされた。これにはずしんときた。
他の話も良かったのだが、読んでいて似たような場面がでてくるのがちょっと辛かった。例えばリストラの面接場面だが、この描写はもちろん大切だと思うが、毎回毎回同じような展開ではやはり飽きてしまう。面接者に対するセリフが読めてしまうからだ。なんだかなあという感じ。わかっているから先にいってよって感じになってしまう。
8歳年上の恋人、陽子とのやりとりは陽子のさっぱりとした気性のせいか、とても生き生きとしていて楽しめた。ただ、このシリーズが続くようであれば、なんとなく暗雲が暗示されているような気がして心配になった。取り越し苦労だといいのだが。
とにかく皆に幸せになってほしいものだ。リストラは他人事には思えないからね。