君たちに明日はない/垣根涼介

 2005/04/11に、はてなにアップしたものです。続編がでたので再録しておきます。これはマイレコに投稿するために書いたものなので完全なオススメ書評となっています。当時の評価は★★★★☆です。全般的にとてもよく出来た連作短編集ですごく面白かったです。長編といってもいいでしょう。とくにACT3「旧友」は素晴らしかった。最後のACT5「去り行く者」も良かったです。ただ、ACT4「八方ふさがりの女」は少々退屈だったので、星半個減らしました。
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君たちに明日はない

君たちに明日はない

君たちに明日はない (新潮文庫)

君たちに明日はない (新潮文庫)

 いかがわしい社名の、さらにいかがわしい顔つきのクビ切り職業集団。つまりは、顧客の企業から委託され、リストラ予定者に退職を迫る、クビ切り面接官。
 主人公・村上真介は33歳という若さであるが、大抵は自分より年上の企業人に退職を勧告してゆく。
 仕事としては、精神的にかなりキツイものがあるだろうし、職業としても全然カッコ良くないのである。それなのに、垣根涼介が描くと、それがドラマになりエンターテインメント作品になるのだ。
 リストラ対象者に、建材メーカーの支店長、営業企画部の課長代理の女性、元同級生の銀行マン、音楽事務所プロデューサ。
泣かれたり、殴られたりとしながらリストラ対象者に真摯な気持ちで接していく真介に、こちらまで熱くなっていくのだ。
 いつもの垣根涼介テイストが散りばめられていて、それは、やっぱりエッチな主人公であったり、車やバイクの趣味であったり、音楽であったりと楽しませてもらったし、この作品を華やかなものにしてくれていた。
 いつもと同じ日常が続いてゆくと信じていたある日、突然にクビを言い渡される。自分だけは決してそんなことはないと思って過ごしている毎日が、ある日突然に引っくり返る人生。そんなとき人は何を思い、何を信じて生きていけばいいのだろう。
決して他人事ではない。
 いい大学を卒業しても、絶対大丈夫だと思って就職した大企業であっても、それは違わない。私たちには絶対という言葉はないのだ。それでも明日を信じて生きていきたいと思うし、出来れば人生を楽しみたいと思うのであった。
 君たちには明日はないのだろう。だが、そこからの人生はやっぱり自分で切り開いていかねばならないのだ。楽しい人生か、詰まらない人生になるかは自分次第なのである。
ラストシーンはいつもの垣根涼介らしく、一筋の風が通り過ぎるかのような爽やかでほろりとする場面で終わっていた。

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当時コメントをトラックバックを頂いておりますのでそれもあわせて載せておきます。

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# 聖月 『最初は面白いと思ったんですけど・・・ぬるかった。まあ、それはそうと、私には明日はあるわけで、明日から鹿児島なのだあ(^O^)/父親参観に帰るのだあ(^O^)/月曜日に帰ってくるのだあ(^O^)/3泊4日なのだあ(^O^)/ということです(^.^)』
# でこぽん 『エエェェエエ!そおなの?面白かったじゃん!まあ、スーサラにはちとぬるいかもね。ふ〜ん。また鹿児島ですか。やけに顔文字が多いなあ。じゃあ私も使っとこおかな。よかったねよかったね(*^。^*)』


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『君たちに明日はない』 垣根涼介

▲「君たちに明日はない」 垣根涼介 新潮社 1575円 2005/3

「君たちに明日はない」垣根涼介

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