ハンプティ・ダンプティは塀の中/蒼井上鷹

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★★★★☆
 初、蒼井上鷹です。
 「鉄扉の閉まる重い音がした。七月某日午後三時ちょい過ぎ。おれが外の自由な世界から締め出された瞬間だった。」交通事故のトラブルで留置室に入れられたワイ(和井)は、そこで4人の先客と出会う。5つの連作短篇集。
 うっわー!第一話の「古書蒐集狂は罠の中」がめちゃくちゃ面白い。大好きだ。
 塀の中となれば、日常の謎しかないだろうというこちらの思惑をひっくり返して、どうして塀の中にいることになったのかという話をしていくのだから、そりゃあ、わくわくどきどきしてくるのも当たり前か。捜査を行うわけではないので、これは安楽椅子探偵ものしかないだろうと思っていたが、どうやら必ずしもそうではなく、謎解き合戦といい、話のひねり方といい、にやりとするところも随分あって、なかなか楽しませてくれた。
 ただちょっと残念だったのは、折角の舞台設定をいかしたミステリが少なかったということ。制限があるので塀の外の事件を扱うのは仕方がないが、さすがにそればかりでは面白くないだろうと、日常の謎も扱ってくれていたのだが、これがそう大して面白くなかった。第二話の「コスプレ少女は窓の外」。オチがどうでもいいことだったのでガックシ。
 だんだんとテンションが下がってきたのか、まあ、勘で謎解きをされても、こちらもずっこけてしまうのは仕方がないし、第一話ほどの面白さがなくなっていったのは残念。それでも狭い部屋の様子から始まって、そこの人間関係も楽しく、独特の雰囲気のあるミステリに仕上げてくれたのは嬉しい。
 ちょっと変わった留置所ミステリを楽しみたい方にお薦め。