名探偵 宵宮月乃 5つの謎/関田涙

名探偵 宵宮月乃 5つの謎 (講談社青い鳥文庫)

名探偵 宵宮月乃 5つの謎 (講談社青い鳥文庫)

 これは、青い鳥文庫における本格ミステリのシリーズ、マジカルストーンの話、はちょっとお休みして、可愛らしい名探偵、宵宮月乃がどんな難しい謎もサラサラ解いちゃうという、遊び心満点の短編集。もっと平たく言えば、ま、この5つの本格ミステリ、解けるものなら解いてみろ、という、いわば読書に挑戦状を送りつけてきた本なのである。
 なので、児童書といえども侮れない。いきなりプロローグから、倒述ミステリーが始まり、犯人がどんなトリックを使って病室に侵入したのか解いてみよ、ときた。ならば、数多くのミステリーを読んできた者としては、たかだか2,3枚の頁で降参するわけにはゆかない。穴の開くほど図面に見入り、本をくるくる回して頑張った……。
 密室あり、次々と送られてくる謎のメールあり、コンゲームあり、その一つひとつにいちいち感心して唸るものの、今回は(も?)全く歯が立たなかった。だって、ただ機械的に謎解きするんじゃなくて、ほろりとする話を挟んでいるのだから、ついついそちらのほうへ気持ちがいってしまうじゃないの。やっぱり仲間を思う優しい気持ちや健気な病気の子供には勝てないなあ。でもこういう子供たちが登場するので、このシリーズは大好き。そして、ほんとに面白い。
 それにしても、今回も充実した本格ミステリを堪能させてもらった。よくぞこんなにたくさんの謎を考えつくものだと感心するばかり。あ、それもそのはずですね。本格ミステリ作家の関田さんですから。もちろん、ミステリー作家志望の月乃ちゃんがスラスラと謎解きするように、ネタ作りは御茶の子さいさいなんでしょう。そうそう。叙述ミステリまであったのには恐れ入りました。
 ちなみに、あとがきの謎は、解けなかった、です。次のページにヒントが書いてあるってことだけど、何もなかったぜ? 著者紹介が載っているだけだった。もしかして炙り出し? (これをずーーーっと考えていたために感想文を書くのが遅くなってしまったよ。なんてこったい。)