晩餐は「檻」のなかで/関田涙

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★★★★★
 うひゃー!面白かった。面白かった。もう滅茶苦茶面白かったよお。
 社会派ハードボイルド作家・錫井(すずい)イサミ。「デビューはしたものの、鳴かず飛ばずで、読者からも文壇からも忘れられつつある(というか、そもそも全く知られていない)作家」の日常生活のパートと、その彼がリアルタイムで書いていく本格ミステリーの作中作のパートが交互に語られる。
 とにかく本格ミステリということで、どんなことをしても謎を暴いてやる、という意気込みも満々で読み出す。今まで、関田さんの本格ミステリ作品で真犯人が判らなかったことはないと豪語するものの、敵(?)も然る者で一筋縄ではいかない作品を書いてくるから、油断は禁物。しかし、この作中作、滅多やたらと小難しくできている。文章が端正だからなおさら難しく感じるのか、「カメ」「イヌ」「サル」「クマ」「ヘビ」「ヤギ」「トラ」というコードネームを持った7人の男女が喧々諤々、誰が殺人犯の「トラ」なのかを推理していく様子を読んでいくのは正直、厄介だった。
 だからか、一方の、作家の錫井のパートは砕けすぎるぐらい砕けた文体で、たまらんぐらい面白かった。文学論をぶってみたり、ネットで書かれたことを話してみたり、挙句の果てに、挿○(自主規制)まで出てくる始末。ここまで開き直ってくれると、いっそ清々しいものがある。とくに関田さんと掲示板で話したことを思い出したりするものだから、錫井と関田さんが被ってしまって、恐ろしいことに同化してしまいそうになった。そうじゃないと打ち消すのにどんだけ苦労したか。始終にやついてしまって危ない人のようになっていたよ。いやほんとに。何度吹いたかわからない。いやあ、こんなにおいしい展開になっているとは思ってもみなかった。ありがとう関田さん。
 ところで作中作のほうだが、「檻」のなかでやる「仇討ちゲーム」の真相は早々に諦めた。ただ探偵役の「サル」が誰だかは見当がついていたのだが。まあ、他のことは伏線があったのかどうかさえ怪しくなり、勘でしか答えられないというのでは、これはもうリタイアするしかない。しかし、一番肝心な作品の肝は見破っていた。と、そっくり返って高笑いしていたんだよ。
 そ、それが……。
 うぎゃー!そうきたか。むむむ。
はい、予想の遥か上をいった結末でございました。そして確かに、朝日のように爽やかな清々しいラストでございました。はい。
 超おすすめ。

追記

 あんまり面白かったので、興奮しすぎて頭の悪い感想文になってしまってごめんね。関田さん