亡霊島の地下迷宮 マジカルストーンを探せ! Part4/関田涙

亡霊島の地下迷宮 マジカルストーンを探せ! Part4 (講談社青い鳥文庫)

亡霊島の地下迷宮 マジカルストーンを探せ! Part4 (講談社青い鳥文庫)

 第28回メフィスト賞作家関田涙氏が少年少女たちにおくるファンタジー作品、「マジカルストーンを探せ!」のPart4。

 海辺で「助けて」という手紙が入ったメッセージボトルを拾った日向は、月乃と一緒に亡霊島に渡ることにした。どうやらここに5つ目のマジカルストーンである土の石を持った少年が閉じ込められているらしい。暗くてジメジメして、おまけに化け物やガイコツまでいる監禁場所から、果たして二人は少年を救い出せるのだろうか。

 このシリーズも4冊目になって、ますますパワーアップしてきたように感じる。今回はファンタジーというだけでなく、タイトルに「亡霊島」とか「地下迷宮」なんて言葉が踊っているように、ぐんとホラーテイストもあって、まさに夏の読書にぴったりだった。

 わたしはいい大人なので最近はほとんど児童書なんて読まないのだが、関田氏のこのシリーズだけは楽しみに読ませてもらっている。とにかく二人の会話が可愛いのが良い。子供の読むものだからそんなことは当たり前だろう、と大人は思うかもしれないが、さらりと気持ちよく読める本というのは、意外と少ないのである。

 日向と月乃の友情は少年少女の憧れだろうと思うし、ちょっぴり嫌な奴に書いてある悪役にしたって、結局のところ、しょうがないなあと思うのだから、読んでいても気持ちがいいのである。主役も脇役も、要するに登場人物全員が魅力的なのだ。きっと相当神経を使って書いたのではないかと思う。それほど誰もが生き生きとしているしキャラが立っているのだ。これにはちょっとびっくりした。マジカルストーンの土の石の意味にもグッときたなあ。

 そして、まるで読者に挑戦状をつきつけるかのように、次から次に出している謎やクイズ。これが素晴らしい。こんなふうに畳みかけるよう出してくるのだって、とことん最後まで楽しんで読ませたいと思うからだろう。さすが本格ミステリ作家である。トリックのアイディアは半端ではないし、独創的でユニークなのである。これには唸ってしまった。ほんとうに、小さいお友達だけが読むのは勿体ないと思う。

 毎回出される数の問題にしてもそう。こんどこそ解いてやろうと、紙と鉛筆を用意までして頑張ってたのだが、またしてもやられてしまった。それも、将来はミステリ作家を志望しているとはいえ、子供の月乃に簡単に解かれてしまうのだから、唇を噛み締めてしまったじゃないか。ま、わたしはミステリ作家になりたいわけではないので、子供に負けたところで悔しくもなんともないが。(これを、世間では負け惜しみという。ははは)

 というわけで、児童書といえども侮れないのである。逆転につぐ逆転もあり、お楽しみも満載の本書である。

 どうぞ、この夏休みは大人も子供と一緒に楽しんでくださいね。

 あっ、と。そうそう、今回のカバーイラストは今まで一番良かったです。動きもあって、キャラがとても可愛らしかったです。本文のカットも良かったですねえ。

 お薦め。