- 作者: 佐々木譲
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/09/26
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このミス一位だというのと、直木賞候補作品というので、かなりの期待を持って読ませてもらった。結論から言えば、皆さんが騒ぐほど非常によく出来たミステリ、あるいは面白い小説ではなかったということである。『制服捜査』が警察小説として非常に読ませる人間ドラマ的作品だったので、自分勝手に想像したというのも良くなかったかもしれない。本書も、警察小説としてみれば、父親、息子、孫の三世代にわたる警察官としての人生を描いているので、親と子を対比させて読んでも面白いし、また警察官とはどういうものであるのかを、それぞれの立場で考え感じたことを反芻していくのも面白いのだ。しかし、この人間ドラマにおいても、魅力ある描写が少なく、読後感にしても爽快だったとは言えない。泥臭いのもたまには良いのだろうが、エンタメ部分を期待している分、わくわく感から程遠いというのは、長い物語を読んできた者としては、ガッカリしてしまう。つまりは、格好良くなかった、ということに尽きる。またミステリとしても論理的展開に乏しく、伏線からというより、描写そのもので犯人が判ってしまうというのであれば、謎解きの面白さもなく、なんとも中途半端な作品だったとしか言えない。それというのも、この物語の中心となる、祖父の死の真相がおおよそ腑に落ちないものだったせいだ。動機が弱い、というより、そんなことだったのか、と脱力してしまうのでは、ミステリとしては読めない。ということで、三世代の話にする必要があった物語だとは思えなかった。