無罪世界
木原音瀬
リブレ出版 2007-09-20
asin:4862632459
Amazonで詳しく見る
楽天で詳しく見る
★★★★☆
久しぶりにBL小説を読んだ。それも木原音瀬の書き下ろし最新刊だ。
ここんとこ、古典なんぞを読んでくらくらしていたものだから、読む前からかなり嬉しくてテンションが上がっていた。ただし、木原音瀬が書く小説だ。それなりに覚悟して読まないといけない。が、読み始めて途端にガッカリした。覚悟もなにも、片方が言葉を喋れないのだ。心が痛くなる以前に、ラブラブなんてはるか彼方だろ、と思うような意思疎通のできない二人の話だったからだ。
ブラジルのジャングルで育った従兄弟の世話をすることになった主人公。悪徳訪問販売をやっているような男だ。普通のラブラブBL小説なんかになるはずもなく、まるで人間と野獣。しかもそれが環境問題から人権問題まで発展していくのだから、とてもじゃないが、お気楽、能天気に読むというわけにはいかなかった。
ところが、さすが文章には定評がある木原音瀬。こんなイロモノ設定にもかかわらず読ませる手腕はすごいとしか言えない。言葉の壁をものともせず、かなりの分量を最後まで飽きさせることなく、しかも実に自然な流れでエッチに持っていくところなんて感動すらしてしまう。とくに、酒好きのぐうたら医者の落合との会話は、ホッと一息つけて良かった。そして、ラストがまた素晴らしかった。途中の退屈さが嘘みたいに、ああ、やはり木原音瀬はいい、と再確認した読書だった。
木原ファンの方には是非読んでほしい本です。オススメ。