正義のミカタ 〜I’m a loser〜/本多孝好

正義のミカタ―I’m a loser
正義のミカタ―I’m a loser
本多孝好

双葉社 2007-05-22

asin:4575235814

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 ★★★
 主人公は筋金入りのいじめられっ子だった。高校時代に自分をいじめていた奴のいないところにいく、という決死の覚悟で入った大学。そこは三流大学だった。が、そんなことはどうでもよい。要は、大学生活が楽しくあればいいのだ。
 そんな主人公の前に、かつてのいじめっ子がいつものように金を要求してくる。これは幻か。どうも幻聴まで聞こえるようである。
 大好きな本多の作品というのでかなり期待して読んだ。読み始めたら、本多らしくなく軽やかな文体が結構面白い。お洒落な男女の話じゃなくても結構いけるよ。と、思ってすいすいと読み進めていくのだが。う〜ん、どうも本多と長編、しかも青春ものは合ってないような気がしてくる。というか、単にわたしの好きな話ではなかったということかもしれない。途中までは面白かったのだが、だんだんとマンネリ気分が襲ってきて読むのに飽きてしまった。キャラは立っているし心情もバッチリ。面白いことは面白いのだが、いじめられっ子が正義の味方になるという設定に無理があるのか最初の勢いが失速していって、どこか中途半端な感じになってしまっていた。徹底的に勧善懲悪な小説としても良かったのではないかと思うのだが。悪者はとことん悪者として登場してくれて、正義の味方がバッサバッサと悪人をなぎ倒していってくれると楽しかったのかも。
 きっとタイトルにもある「正義のミカタ」はそうそう簡単には“正義”を教えてくれるわけではないということだろう。正義の見方というのは、各人の心の中にあるのだということなのかもしれない。
 もっとも愛すべきキャラはトモイチ。彼との関係が後半少々希薄になったのは惜しい。蒲原さんとの関係もその後どうなったのか。続きがあるのか。だから童貞がどうなったのか気になっているところだ。