- 作者: 雫井脩介
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2007/08
- メディア: 単行本
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刑事もの、かと思えばどうやら違ってたようで、人情風情味あふれるコミカルな警察小説だった。ギャグ小説やユーモア小説があまり得意でないので、時にはこういったお腹の底から笑える小説が嬉しい。
三度声を出して笑った。
新米刑事となった主人公が、ベテラン刑事でもある父親と組んで捜査にあたることになるのだが、自分達を捨てて出て行った父親をどうしても許すことができなくて、何かといえば突っかかってしまう。という父と息子の確執がテーマ。と思いきや、どうやら本書の肝は奇人変人の警視庁捜査一課の五係の人物描写にあるようだ。筆頭は父親。息子への捜査活動のレクチャーはさすがに「おお!」と唸るほど素晴らしいが、いかにも笑いを誘ってしまうというもの。外見重視にも笑えるが、なにより「ジャッケット・プレイ」には大いに笑わせてもらった。そういう父親を白い眼で見る息子がこれまた同じことをするのだから、これはもうニヤニヤするしかあるまい。
警察小説やサスペンスミステリーとして読んでしまうと、構成も生温いし展開も回りくどいので腹が立つかもしれない。が、キャラクター小説として読むと、とても魅力的な一冊である。
ということで「クローズド・ノート」の読者には雫井の違う一面を知ってもらうためにも是非お薦めしたい。反対に「犯人に告ぐ」や「火の粉」のような卓抜な人物造形が中心の、シリアスで本格的なサスペンスが好きな読者にはお薦めできない、ということを付け加えさせていただきたい。