海の仙人/絲山秋子

海の仙人
海の仙人
絲山秋子

新潮社 2004-08-28

asin:4104669016
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★★★★★海の仙人 (新潮文庫)
 絲山秋子すごすぎ。うーん、これこそ小説。こういう小説を読めるから読書はやめられないのよね。「ファンタジー」と呼ばれる変な「神様」がでてきたりして、あと一歩でおちゃらけてしまいそうになるところをぎりぎりで踏み止まって、心の隙間を突いてくるこのセンスが凄い。
 「ファンタジーがやって来たのは春の終わりだった。」という出だしの一文ですでにノックアウト。その後に続く文章がこれまた綺麗で上手いなあと感動して読んでいくのだが、そのうち文章自体より主役三人の行く末が気になってしょうがなくなる。いつもは誰にも見えない「ファンタジー」なんていう者を引っ張り出してきているあたり、すでにこの話の結末が想像できるのだが、単なるお涙頂戴の小説にならないところが絲山の凄いところだ。それでも小説を読み終わったあとにくるじんとくる思いは捨てがたい。ぐるぐるといろんなことを考えては泣けてきそうになるというのは、やっぱりいい。
 絲山の全著書を読んだわけではないが、最高傑作と言っていいのではないだろうか。
 お薦め。