- 作者: 絲山秋子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/09
- メディア: 単行本
- 購入: 5人 クリック: 32回
- この商品を含むブログ (97件) を見る
絲山秋子の最新作は、ひたむきに優しい女の人達の話だった。
出だしのお粗末な情事にかなり引いてしまって、好きな絲山秋子でなければ早々に投げ出してしまうところだった。投げ出さなくて良かった。終わってみれば案に相違して、なんとまあ気持ちの温かくなる話だったことか。
途中から主人公はアルコール依存症になり、どん底まで落ちてしまう。苦しんで、苦しんで、ふと正気に戻ったとき、思い出すのは優しさで包んでくれていた彼女ではなくて、とんでもない仕打ちをしてくれた昔の彼女だったという泣き笑い。しょうもない情事だと思った場面は、後に起こった不幸な事態から思えば、何も考えずにやれたのはなんと幸せなことだったんだろうか、ということ。優しさの種類にはいろいろあると思うが、「ばかもの」と口からひょいっと出てくる関係はほのぼのとしていていいな、と思う。人は得てして目に見えない優しさには気づかないものなのだ。
お薦め。