首無の如き祟るもの/三津田信三

首無の如き祟るもの
首無の如き祟るもの
三津田信三

原書房 2007-04

asin:4562040718

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 ★★★☆
 評価に困った。本格ミステリの評価だけなら星5つ(最高点)。読み物として楽しむのであれば、星2つかな。というほど、ガチガチの本格ミステリ。本格好きにはたまらない一冊だろう。
 相変わらず横溝正史テイストのおどろおどろしい雰囲気を残しながら、ただしホラー色はほとんどなく、その分、本格ものとしては出色の出来栄えだった。論理的に鮮やかに謎解きがされてゆく様は、読んでいても非常に気持ちが良い。
 奥多摩に代々続く秘守(ひがみ)家。この由緒ある屋敷で、ある意味密室といわれる場所で殺人が起きる。おそらく○○○○しかないだろうということは思いつくのだが、関係者が何人も死んでいくので自分の考えがぐらついてくる。そこへこれでもかと畳み掛けるように物凄い仕掛けをしてくるのだからたまらない。そしてラストの二転三転とする真相。これが度肝を抜かれるほどよく出来ていて素晴らしい。   
 ただし読み物としては、序盤の村の因習の説明が冗長すぎるせいか、殺人が起きて物語が動き出すまでが長い。民俗学の薀蓄はなくなっていたので読みにくさは解消されていたが、漢字が多すぎたり読み方が難しくて引っかかったりと、読むリズムが崩れてしまって遅遅として進まなかった。これはわたしの頭の悪さが原因なので申し訳なく思うのだが、それでも登場人物の魅力のなさは読む気力をなくしてしまう。
 ということで、本格ミステリとしては最高だが、物語としてはホラーが少なかった分、詰まらなかったということか。