首鳴き鬼の島/石崎幸二

首鳴き鬼の島 (ミステリ・フロンティア)

首鳴き鬼の島 (ミステリ・フロンティア)

 ★★★★
 す、すごかった。
 いや、なにがって、怒涛のラストもすごかったが、本格をここまで古典的な作法で創り込んでいるのが、すごい。舞台設定から人物描写の薄さまで、果ては、関係者一同を集めての謎解きに至るまで、見事にステレオタイプだったのだ。しかもこんな無味乾燥のプロットを最後には「おお!」と唸らせてしまうのだから、その手腕に脱帽してしまった。まさに恐れ入ったという感である。
 嵐の夜、相模湾に浮かぶ孤島で、外部に連絡できないまま資産家の館では、次々に切断された死体が転がってゆく。なぜ身体を切断されるのか。それは、首を切られた鬼が夜な夜な鳴いて首を求めて彷徨っているという「首鳴き鬼」の伝説を元に行われているからだ、という。その伝説を取材するために訪れていた雑誌編集者の稲口とその女友達の茜は、後継者問題をバックに「見立て殺人」の連続殺人事件に巻き込まれる。
 まず、「見立て殺人」というのに笑った。いいなあ、こういうの。わかりやすくて好き。あと、トリックのロジックが素晴らしかった。ということで、人物描写が記号のようで頼りないとか、会話文でストーリーを引っ張っていくのは勘弁してほしいとか、化学の教科書のような説明は要らないとか、色々と不満があるが、これはまあ本格ということでしょうがないかな。でも本格として良かったのだからOKでしょう。
 お勧め? あ、しません。でも本格ファンには読んでほしいなあ。ということで、怖かった。誰が?