チェーン・ポイズン/本多孝好

チェーン・ポイズン (100周年書き下ろし)

チェーン・ポイズン (100周年書き下ろし)

 ああ、これはほんとに面白かったなあ。
 わたしはこの作家が好きだ。どこが、と聞かれても、肌に合うとしか言えない。その本多の最新作は、驚愕のラストを引っ提げてのミステリ、とのこと。
 完全にやられた。それも嬉しい騙され方だった。
 今回は全くミステリだと知らないで読み始めたのだが、それが良かったのかもしれない。読み始めて早々、これはなんだかおかしいと違和感を覚える。しかしそれが何かわからないまま話は進んでいく。
 冒頭、公園のベンチに座っていた女性が会社に疲れたといって死を願うところから始まる。ベンチには死のセールスマンのような人物がやってきて、あと一年生き続けたら楽に死ねるように御褒美をあげるから、と一年後に会う約束をする。この話と同時に、謎の服毒自殺をした女性を調べているという記者の話が入っていく。
 あまり仕掛けがどうのこうの言うと、誤った先入観を与えてしまうかもしれないし、本書の愉しみが半減すると思う。できれば、本多の文章にうっとりとなりながら、このヒロインの生き様を堪能してほしい。
 お薦め。