
- 作者: アンドリュウ・ガーヴ,宇佐川晶子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/09/05
- メディア: 文庫
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結論は、やはり相当面白かったということだ。
50年以上前の作品であるが、年代的な古臭さが気にならないくらいサクサクと読めた。
とにかく、奇妙な死に方をした妻ヒルダが印象的。帰宅した夫ランバートが、ガスの充満した台所で見つけたのは、ガスオーブンに頭を突っ込んで死でいた妻ヒルダだった。当初、ヒルダの死はガス自殺だと思われたが、状況はランバートに不利なことばかり。ついには犯人として捕まってしまう。裁判が始まってしまうと、死刑になるかもしれないというのだ。そのとき休暇中で帰国したマックスは、親友の無実を信じ、彼を救うためにヒルダのことを聞いて回る。
この作品は、真犯人を見つける楽しみより、ヒルダその人に大きく興味を覚えるのだった。
読みは初めてすぐに、ヒルダの特異な性格が浮き彫りにされてくる。家政婦に聞いてもそうだし、ヒルダの弟夫婦に至っては、「殺されてもしかたがない」とまで断言するのだ。親切なようで押し付けがましい。馴れ馴れしく、自分を卑下しているようで実は尊大。はっきり嫌だと断っているのに、聞く耳を持たず、自分の勝手に行動する。それほどまでに人を不快にさせるヒルダという女性とは、いったいどういう家庭に育ち、どういう青春時代を過ごしたのか。
だんだんと、ヒルダの輪郭がはっきりしてくるのだが、なぜこんな特異な人間ができあがったのか不可解で、それはおそらく厳格な両親の育て方に問題があったようだが、それでも人の話を聞かない、あるいは不愉快にさせることには天才的な性格ができあがったのが不思議であった。読み進めるうちに、ヒルダの性格が、まるでホラーの様相を呈してくるのだった。このへんはぞくぞくするほど面白い。殺したいから殺した。確かにそうかもしれない。
お薦め。