1000の小説とバックベアード
佐藤友哉
新潮社 2007-03-30
asin:4104525022
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★★★☆
なんで、佐藤友哉のファンでもない私がこの小説を手に取ったかというと、たまたま図書館の最新刊コーナーにあったからだ。思いっきりスルーするつもりが縁というのは不思議なもので、あたかも「この本を読みなさい」と、まるで私を誘惑しているようなオーラを発していた。それで私は奇しくも真っ新なこの本を読むことになったのだった。
で、結論は、やはり佐藤友哉は佐藤友哉だった。いや、自分でも何を言ってるのかわからないのだが、私にとって佐藤友哉という作家はすごくビビビっとくるかと思えば、ガクっとくるところもあって、やっぱりよくわからない作家というポジションになっている。それでこの小説なのだが、結局なんだったのかわからないもので終わっていた不可解な小説だった。「片説家」とか「バックベアード」という語がナチュラルに出てくるものだから、佐藤ファンでもない私はすっかりまごついてしまったというのもある。といっても、読んでいる最中は物凄いものを読んでいるような気がしていて、一体このオチをどうつけてくれるのか、わくわくしたのだが。で、結局、終盤にいくにしたがって観念的になり、読解力がない私には訳が分からなくなってしまった。では楽しめなかったのかと言われれば、それが意外と面白かったと言えるのである。なんとも不思議な本だった。とすると、この訳の分からない小説は、それこそが意図したことで、この試みは成功だったということか。だが、明治、大正、昭和から脈々と繋がってきた小説の流れを考えていくことが主題だったとすると、それはあまりにも壮大なことで、これはこれで素晴らしいのだが、壮大すぎて何も解決できてなかったということは、やはり問題なのではないか。きちんと決着をつけてくれなくてはこの世界観は理解できない。