百鬼夜行抄 17/今市子

百鬼夜行抄 17 (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)

百鬼夜行抄 17 (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)

 現実の世界にありはしないものに触れるのが好き。その世界に浸っているときのつかのまの幸福。
 小さい燈子ちゃんがお母さんと離れ、おばさんのうちで雑巾掛けをしてバケツをひっくり返したとき「本当に不器用な子なんだから」と罵られながらも、健気に修行に励む姿にじんとくる。後で知るおばさんの思いにほろりとした「狐使いの跡継ぎ」の話は絶品だった。
 妖怪鳥、尾黒と尾白を自分のものにしようとしている、大人気ない開伯父さん。実年齢は47歳だが、異界に幽閉されていたので、精神年齢は20歳くらい? その開に対して、甥の律の容赦ない言動には爆笑。そりゃ自分の大事な式神を狙われていたら、いくら普段から爺むさい律でも、きりきり怒るだろう。しかしなんで律の式神にそんなに執着しているんだろ。でもそんな開だから、登場しただけで、今度は何をしてくれるんだろうと楽しみだったりする。
 こんな能天気な開と正反対なのが、父親である飯島怜。すでに故人だが、若き日の怜の、自分を諌める夏の儀式「付け馬」は切ない。
 やはり今市子の『百鬼夜行抄』は良い。何度も読み返して堪能した。