ガリレオの苦悩/東野圭吾

ガリレオの苦悩

ガリレオの苦悩

 なかなか楽しめた短編集だった。
 科学の知識をふんだんに取り入れ、トリック重視だと思っていただけに、結局、しみじみとした人情味のある話にしてくれていたのは、嬉しい誤算だった。全篇に通じるのが、オチの切なさ。これは、いいねえ。
 湯川准教授に対して、「端正な」という表現が何度も出てくるのは、やっぱり福山雅治を意識しているのかと邪推してしまう。でもこういう楽しみがあるから、ドラマの原作モノを読むのは、楽しい。
 内海薫刑事はこの短編集で初出場なのかな。ちょっと抜けているような可愛らしさは、やっぱり柴崎コウをイメージしてしまう。で、科学者としては一流だけど、人間としてはどうよ、と、世間の評判がいまいち分かってないらしい湯川に対して、なんとか食いついていこうとする心意気が、けな気で可愛いじゃないの。