穂足のチカラ/梶尾真治

穂足(ほたる)のチカラ

穂足(ほたる)のチカラ

 ま、あれですな。やっぱり日本人というのは、ヒーロー物が好きですな。
 うだつの上がらない亭主や、呆けてきた年寄りや、登校拒否の息子や、ヤミ金に手を出したパチンコ依存症の母親や、私生児を産んだ娘や、もうこれ以上崩壊しようの無い家庭が、突如立ち直り、変身して、超然と悪に立ち向かっていくという、勧善懲悪の小説。あれ?
 いやしかし、なんといっても漫画みたいな表紙から、後光が差しているではないか。お互いに問題を抱えてヘタレだった家族が、このイラストのように、きりりとした顔つきに変わるというのは本当。その原因となったのが、赤いビロードの布を引きずっている、3歳児の穂足(ほたる)。なにやら不思議なチカラを持っているとかで、最後は神懸かり的な技を見せてくれた。涙あり、笑いありの、実に痛快な話だった。
 550ページもある小説なので、終盤少々だれる感もあるが、年配の方から若者まで広く楽しめる小説だと思う。
 カジシンが好きな方は是非。