非常識家族/曽野綾子 

非常識家族

非常識家族

 エリートだからといって、セレブのような生活をしているわけではない。というわけで、エリート一家に生まれた長男が自分の家族がいかに変わっているか話してくれる。ま、そういう長男も二浪しているからなのか、祖父ちゃんや叔父さん達にからかわれっぱなしという何とも情けない身の上であるが。
 今時珍しい三世代同居である。祖父ちゃんや伯父さん達が東大卒だとか、父親が大学教授とか、伯父が副社長とか、世間からすると、どう見たってエリートにしか思えない一族なのに、実際はなんとまあ、気さくでけちで面白い家族なんだろう、ということ。
 三世代同居なので、いくら玄関が別になっていても、お嫁さん、つまり母親の負担が大きいのだが、そんなことを微塵も感じさせずに飄々と家事をこなしていく姿に感動すら覚えた。そうか、思ったことは溜めないですらりと言葉に出せばいいんだし、訪ねてきてくれた人にはご馳走じゃなくても、カレーでもおでんでも、ご飯に鮭でもいいから何でも食べさせてあげればいいのね、と思った。あ、しまった。うちには誰も遊び来てくれる人がいなかった。
 肩の力を抜いて気楽に読める本。
 お薦め。