風に顔をあげて/平安寿子

風に顔をあげて

風に顔をあげて

 ★★
 これはちょっと好んで読みたいと思う小説ではなかったなあ。主人公が25歳でフリーターという設定がわたしに合わなかったのか、それとも登場人物たちのやる気のなさ、あるいは反対に優等生的言動が伝染したのか、せっかく弾けそうに元気の良い主人公の若さが、だんだんと重苦しいものになってきて、読み進んでいくうちに気分が滅入っていくのには参ってしまった。
 主人公は25歳という年齢を、まだ25歳ではなくて、もう25歳だと思っている。三十になることを思うと焦る「三十怖い病」にかかってしまい、高卒でアルバイトを転々としていること、いつまでもフリーターでいることを思うと、やはり将来のことが不安でしょうがない。ボクシングで頑張っている、ような、彼氏との関係もイマイチ進展がないのも不安。そんな不安定な気持ちのところへ、高校生の弟が「家出した」なんて、しかもホモだとカミングアウト。で、転がり込んできたりするものだから、ますます心の均衡は崩れて、ゆく?
 若い女性の一人語りの小説かと思って読んでいたら、意外と幅広い年齢の人物たちが出てきて楽しませてくれた。だけど、ホモだという弟と母親の喧嘩なんて、そりゃ当たり前のことだろうし、その上、10年前に出て行った父親をしつこく待っている母親の鬱陶しさとか、甲斐性がないだけじゃなくて浮気までするような彼氏とのごたごたとか、とにかく何やらかやら降りかかってきて、25歳ってどうよ、という小説だった。
 ま、早い話が楽しい小説ではなかったということで、すんません。