- 作者: ジェフリーディーヴァー,池田真紀子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/10/10
- メディア: 単行本
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キネシクス分析の天才であるダンス捜査官が追う相手は、終身刑のカルト指導者ダニエル・ペル。巧妙に仕組んだ計画により、まんまと脱獄に成功したペルは、ガールフレンドを言葉巧みに操り、行く先々で、自分を脅かす者を容赦なく殺していく。追うものと追われるもの。二つの天才的な頭脳が、お互いを出し抜いたとき、物語は思わぬほうへ加速してゆく。
そういえば、ディーヴァーはどんでん返しがお得意だ、ってことを忘れていた。それこそ、まんまとディーヴァーに操られて騙されてしまった、ということか。心地よい脱力感がなんともいえない。
嘘を見破る達人とはいえ、ダンスのCBI捜査官としての仕事は、それほど派手とはいえない。いわゆる人間嘘発見器なんだが、こつこつと相手の表情や仕草を観察して、嘘をひっぱがし、彼らの感情を引き出してゆくのは忍耐力を必要とするし、地道な作業といえる。だからか、序盤、中盤とやや盛り上がりに欠けたようだ。しかし、終盤のドンデン返しによる怒涛の展開には、やはりディーヴァーだと恐れ入った。
心の内を吐き出してゆくのを読むのは悪くはないが、やはりそれだけだとハラハラ・ドキドキ感は少ない。感情の起伏には、やはりスピード感が必要だろう。それでも、主犯のペルや周りの女たちの造形が良くできていたせいもあり、キネシクスという地味なキャラを最大限に生かしたストーリー作りには拍手を送りたい。