- 作者: 大村友貴美
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2008/08/29
- メディア: 単行本
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まさに横溝正史の世界。
といっても、事件の背景ではなくて内に秘めたどろどろとした感情であるが。実際、殺人の動機も手段も目新しいものは何もないのだが、そこから生まれる感情の複雑さに我を忘れて読んだ。
かつて処刑場だった裏の歴史を知り、この島で暮らす人々の閉塞感を思うと、やり場のなさを感じる。若い人がいなくなり過疎化が進むのはなにもこの島ばかりではないが、それでも「島」という物理的に閉ざされた世界に住み続けていくのは、閉鎖的な人間関係の中にも、強い決意みたいなのを感じるのだった。
本格ではないし、事件そのものを楽しみ方には物足りないかもしれないが、横溝正史の雰囲気が好きな方には是非お勧めしたい作品。
(次作では、渋い藤田警部補が見たいです。)