風の墓碑銘/乃南アサ

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★★★★
 解体工事中の住居跡から白骨死体がされた。聞き込みをしていると、こんどはその家主であり老人ホームに入っている徘徊老人が撲殺される。音道貴子と滝沢保のコンビによる「凍える牙」の女刑事シリーズである。
 ファンにとっては待望の長編作品。シリーズものというだけで楽しさ倍増である。
 久々の音道は恋人との関係にぐじぐじ悩んでいる様子だが、正義感と堅物は相変わらずか。滝沢のほうは歳とって丸くなったのか、妙に人当たりが良くなっていた。だけどこんな滝沢は知らない、女刑事は可愛くない、とお互い意地の張り合いのように反発しあうところは可笑しくさえあった。どこまでいっても噛み合わない会話は最後まで健在。水と油のような二人だが、音道の若さに嫉妬し、老刑事の滝沢に肩入れしてしまうわたしはやはり年取ったのだろうか。それでも相手を認め、阿吽の呼吸で動いていく姿はさすが名コンビである。とても読みやすいし、一気にラストまでいく筆力は相変わらずだった。
 24年前の事件と現在とのつながり。足を棒にしての聞き込み。音道の勘と滝沢の人脈で犯人に行き着く様は面白い。ただ頻繁に視点が変わるところと、肝心の物証の見つかり方が偶然だったのはどうかと思ってしまう。それまでが非常に面白かっただけに、あらら、と気が抜けてしまったのが正直なところだ。