天使は容赦なく殺す/グレッグ・ルッカ

天使は容赦なく殺す

天使は容赦なく殺す

 ★★★★
 初ルッカです。
 新シリーズ第一作というので読んでみました。本当は、表紙カバーが芸術的に素晴らしいというのが一番の理由かも。
 で、読み終えて、ほうっ、と感慨にひたった。と同時に、一気に力が抜けた。
 面白いと言えば面白いと言えるし、つまらなかったと言えばそうかもしれない、という、極めて曖昧な感想になってしまう。突出してわくわくするくらい面白いところもあるのだが、最初から最後まで一気に読むということができなかった。
 イギリスと中東を舞台に、イギリスのエージェンシーが活躍する話だからプロットは悪くない。ただ、ジェームス・ボンドが活躍したような冷戦時代の華麗なるスパイ物語を期待していると足をすくわれてしまうかもしれない。タイトルの華々しさにもちょっと騙されてしまった感も否めない。
 9・11以降のテロが横行する時代の話だから、暗殺も華麗にやり遂げるというわけにはいかないのである。ちょっと情勢が変われば、いかに政府による指令でも味方でさえ敵に回ってしまうという恐ろしさ。いやあ、このあたりは手に汗握るドラマがあり、ついつい読むのに力が入ってしまった。面白かった。
 ただ、主人公が女性というのもあるだろうが、格好良さの中にもどこか生活臭がちらちらと見え隠れして野暮ったい感じがしたのはわたしだけであろうか。事がスマートに運ばなかったというのが悪いのではない。が、主人公の魅力の乏しさ、登場人物全般のキャラ立ちの無さ、すかすかしたセリフの言い回し等については、もう少し読者を楽しませてくれてもよかったのではないだろうか。
 でも次作品が楽しみになってきました。