仮想儀礼/篠田節子

仮想儀礼〈上〉

仮想儀礼〈上〉

仮想儀礼〈下〉

仮想儀礼〈下〉

 凄いとしかいいようがない。
 新興宗教団体の発展と衰退を描いた作品なので、決して清々しい話ではない。だが、ラストまで一気に読ませてしまう筆力はさすが。
 夢破れたゲームのシナリオライターが金儲けのためにネット宗教を始める。まるで詐欺としか言いようのない宗教なのだが、そんな神に対して、熱心な信者達が現れ、陶酔し、さまざまな人を巻き込み、また、自分の思惑とは関係なく、一人歩きしていく様は、背筋が寒くなるほど、怖い。だからといって、それに対して不愉快な思いはなかった。ただ、もっとどこかでなんとか出来なかったのだろうか、という思いが頭にこびりついて離れない。ただただ皆が幸せになってくれるといいのに、と思うだけだった。
 お薦め。