ヒトリシズカ/誉田哲也

ヒトリシズカ

ヒトリシズカ

 数奇な運命にもてあそばれた一人の女性の軌跡を描いた連作集であるが、それぞれの話が衝撃的なわりに彼女の内面がさっぱり見えてこなくて残念。
 事件を起こすたびに、周りの警官をあざ笑うかのように姿を消してしまうシズカ。振り回される警官も気の毒だが、読むほうとしても、するりと話が入ってこなくて参った。
 結局、シズカは逃げるばかりで、彼女はなにをやりたかったのだろうか。欲しかったものはなんだったのだろうか。読み終えたあとに残ったのは、せつなさと虚脱感だった。