チャイルド44/トム・ロブ・スミス 

チャイルド44 上巻 (新潮文庫)

チャイルド44 上巻 (新潮文庫)

チャイルド44 下巻 (新潮文庫)

チャイルド44 下巻 (新潮文庫)

 なるほど、これは掛け値なしに面白い。
 普通に生活していた人が、隣人の密告により、ある日突然に死の強制収用所に連行される。餓死した人も含め、何千万人が命を落としたスターリン時代のソ連では、いつ反逆者やスパイとして逮捕されるか分からない。どんな非道な行為も正当化され、人間が人間として扱われない。では、犯罪は? この国家では連続殺人なぞあってはならないこと。それは資本主義にまみれた反逆者が起こすものだから。ゆえに警察はいらないのだ。したがって殺人鬼は自由に何人でも殺し続けることができた。
 単なるミステリとしてではなく、あの時代のソ連の正体を垣間見た思いがした。苛烈な貧困もそうだし、劣悪な住環境もそうだし、誰でもスパイになりうる国家体制に吐き気を催すのだった。
 とにかく夢中で読んだ一冊。
 お薦め。