クロク、ヌレ!/真梨幸子 

クロク、ヌレ!

クロク、ヌレ!

 表紙カバーが白地に黒の変わった装丁をしていたので、デビュー当時からのイメージからして、ドロドロした愛憎劇を想像していたが、まったく違っていた。結局ミステリになっていて残念だったが、テーマは崖っぷちに立たされた女たちの、意地と誇りと執念を、カラッとコミカルな語り口で風刺したものだった。と、思う。
 バブル期に総合職で採用されたものの今やお荷物となってしまったバブル女や、就職氷河期に当たったために派遣としてしか採用されなかった彼女たちが、怒って嘆くのだ。お互い本音でぶちまけて、転落人生にはなるもんかと熱弁を振るうのである。ただし、出てくる者が揃いも揃ってへたれなせいか事態は思いもよらぬほうへ走り出し、ついにはなぜかミステリーのほうへいってしまうんである。
 死んだ大物小説家が出てきて、自分は車椅子ごとプールに突き落とされたんだと思う、とか、エキセントリックな自称画家に至っては、あれこれぐちゃぐちゃと手紙を書いては弟に金の無心をするし、かと思うと、弟の嫁と殴り合いの喧嘩をしたり、挙句の果てに目玉をくり抜いて大物小説家に送りつけたり、と。まあ、ちょっといっちゃってる人たちが毒を吐きながら右往左往して、ついには、わけのわからぬモノになっちゃった、ということである。ああ、勿体無い。でもとても楽しかった。
 お薦め。