- 作者: 小池昌代
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2008/09
- メディア: 単行本
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一口で言えば、幻想的。
40代50代の女性がつらつら自分のことを語っているのを読んでいたはずが、いつの間にか、妖しげな世界に足を踏み入れてしまっていることに気づく。それは例えば、舌切りすずめの話だったり、森に住む魔女の話だったり。白い爪がにゅるにゅる伸びて朝顔の蔓のようになり、仕舞いにハンドルに複雑に絡みついたり、頭にツノが生えてきて、撫でられると快感がつきあげ、頭部から下半身をぐわーんと貫いたり。言葉の選び方も面白いが、文章が官能的なのである。気づいたときには、どっぷりと作品世界に囚われ、童話の中の住人のようになっているのだった。
最後の作品「りぼん」もすごかった。美しいリボンを容赦なくじょきっと切断したときの少女の悲しみ。なかなか切れないリボンを力を込めてじょぎっと切ると、それはやがて……。実際にそのリボンが手の中にあるような錯覚。ぞわりとするおぞましさが体中を貫いた一瞬だった。