アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))
- 作者: フィリップ・K・ディック,土井宏明,浅倉久志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1977/03/01
- メディア: 文庫
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映画『ブレードランナー』の原作であり、タイトルが印象的なSFの古典。ずっと気になっていたのをたまたま図書館で見つけて読んでみた。
高度な知能を持った精巧なアンドロイドと人間をどうやったら見分けられるかという設定が非常に面白くて、派手なアクションはなくても、それぞれの心理描写だけでぐいぐい読んでいけた。かなり昔の作品であったが、2008年の現在でも十分に楽しめた。ただ、素直にエンターテインメントとして楽しむには、少々手に余る感じがした。一つには、この世界観が単純ではなく、真下にある墓穴世界が非現実的で、いったいマーサー教とやらが、アンドロイドを狩ることと、どういうふうに繋がるのか、一度読んだくらいでは理解できないということだ。それと、火星から逃亡してきたアンドロイド8人に対して、問答無用で殺される理由がはっきりしないということ。SF読みのセンスがないと言われればその通りだし、己のお粗末さが露呈してしまうが、こういう哲学的なところがあって、結局、読後が微妙な気持ちになってしまった。
ということで、ハリソン・フォード主演の『ブレードランナー』を観て、映像で楽しみたいと思う。ちなみに専任捜査官の“ブレードランナー”という言葉も、火星から脱走してきて人間社会に紛れ込んだ“レプリカント”という言葉も、本書にはない。