流星の絆/東野圭吾

流星の絆

流星の絆

  ★☆
 駄作。
 金返せ本だった。Amazonのカスタマーレビューと帯に騙された。とくに帯のネタバラシは酷い。ここまで書いてしまったら、あとは何を楽しんだらいいのか、というほど物語の3分の2は説明しちゃってるし。というか、帯の煽り文句が素晴らしすぎて、どんだけすごい傑作かと、わくわくしたのがいけなかったようだ。読了後に読むと、なるほど、ここまで煽らないと内容のすけすけさが露呈して売れないんだろうと思った。
 悪口しか書けないのが悲しいが、じゃあ、いったい何が一番詰まらなかったのか、と聞かれたら、今回は偏に文章の淡白さによる。どんな物語なのかは、帯で分かってしまっているし、安っぽい人情話は飽き飽きしているので、あとは登場人物の心理描写や背景を読んでいくしかないと思い、なんとか行間から滲み出てくる心情を汲み取ろうとしたが、これがどうにもこうにもお粗末。どんな人生観を持ち、何を大事だと思っているのか、あるいは何のために誰のために動いているのか、それが伝わってこないのだ。ただ、各々の行動を説明しているだけではないか。要は、薄っぺらいのだ。これではとても感情移入なんて出来ない。さくさく読めてリーダビリティがあるとはよく言ったものだ。そりゃあ、さくさく読めるだろう。単に、一文が短くてレポートのようだというだけではないか。ま、どこかの偉い先生が言ってた、人間が書けてない、というのがよく分かったということだ。人物描写に力を入れないのなら、こんな題材を使わないでほしい。
 ではミステリーとしてはどうか。これが最低。これが伏線というなら、どんなものでも伏線になる。「犯人が」と書くだけで下手な先入観を与えてしまうので何も書けないが、動機もお粗末、計画性もないとなれば、伏線もなにもあったものではない。展開のもたつき感もさることながら、止めはお涙頂戴のラスト。読者をこれで感動させられると思われたなら、舐められたものだとしか言えない。タイトルの絆としてのメッセージがどの辺りにあったのか是非教えてほしいものだ。
 ということで、何はともあれ、帯だけは読まないほうがいいだろう。そこそこ楽しめるかもしれないから。