ウォッチメイカー/ジェフリー・ディーヴァー

ウォッチメイカー

ウォッチメイカー

 ★★★★
 ライム・シリーズの第7作。
 今回の相手は、殺人現場にアンティークの時計を残していくウォッチメイカーという男。手口は残忍。冷酷無比な殺人鬼は、10人の人間を殺すべく10個の時計を購入する。その時計のごとく緻密な計画は、天才犯罪学者ライムをして翻弄してゆく。果たして、微細物的証拠を掻き集めたライムの科学的捜査は、殺人者に先んじて被害者となる人物たちを救えるのだろうか。
 新しいキャラである、尋問の天才キャサリン・ダンスも登場し、ライムとアメリアの進展も気にしつつ、非常に魅力的な尋問場面を引っ提げてのシリーズ最新作である。ライム対犯人の頭脳戦もより加熱し、ディーヴァー十八番のどんでん返しが冴えた一作と言えるだろう。
 で、そのネタバレとしか思えない宣伝文句の「ドンデン返しに次ぐドンデン返し」であったが、果たしてそうだった。が、その最初のどんでん返しがいただけない。魅力を感じなかったのが災いしたのか、はたまた立て続けのどんでん返しのせいなのか、仕舞いにはうんざりしてしまった。ラストに至っては、「はあ?」である。
 いや、ディーヴァーだから面白いのは確かである。刑事となったアメリアが抱えていた別の事件も魅力的だし、父親との回想もしみじみとさせてくれる。ルーキーの捜査官もいい味だしている。だが、それでも「ボーン・コレクター」で見せてくれた息をつかせぬ攻防と駆け引きといった緊張感は影を潜め、さまざまな謎はいささか拍子抜けの展開で終わってしまい、最初の期待感はものの見事に裏切られてしまった。いやラストスパートはもちろん一気読みするくらいだし、時間毎の場面場面は非常に面白かったのは確かである。それだけになんとも残念。でもお薦め、と言っておこう。