花水木/今野敏

花水木―東京湾臨海署安積班

花水木―東京湾臨海署安積班

 ★★★☆
 東京湾臨海署安積班シリーズ最新作。5つの短編が収録されている。
 安積班長以下お馴染みの強行犯の面々が揃っており、安心して読める。事件自体はすぐにオチがわかるように書かれているせいか、警察小説としてもミステリとしても薄味なのだが、サラッと読めるのが良い。それより班長としての安積の、胸中穏やかならぬものがあるようで、やけに部下の性格のことをあれこれ気にしていたのが面白かった。おっとりした須田とは安心して喋れるが、生真面目な村雨は苦手だとか。とまあ、こういう気配りができる安積に魅力を感じて楽しく読めるのが、このシリーズの良いところだろう。とくに何かとお騒がせな交機隊の速水は、登場するだけでやけに存在感があって頼もしい。一番面白かったのは、やはり速水が一緒のバーの話、「薔薇の色」かな。

 今回は久しぶりなのでフルネームを書いておこう。安積剛志警部補(係長)、須田三郎部長刑事(太りすぎで動作が鈍い)、村雨秋彦部長刑事(生真面目で杓子定規)、黒木和也(豹のような身のこなし)、桜井太一郎(一番若い)。あと忘れてはいけないのが、安積の同期で交機隊の速水直樹小隊長(警部補)だ。