- 作者: 角田光代
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/09
- メディア: 単行本
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「愛の巣」「ゆうべの花火」「彼方の城」「永遠の花園」「赤い筆箱」「光の川」の6編。
とにかく夢中になって読んだ。どれも非常に面白い。とくに「愛の巣」と「赤い筆箱」はミステリ的だし、「光の川」は他人事ではなく、そんなドラマを自身に置き換えてみては、身悶えるようにして読んだ。
新聞の三面記事欄には、毎日、犯罪が載っている。床下から白骨化した死体が見つかった。家の周りを鉄条網で囲っている。“闇サイト”に不倫相手の殺害を依頼した。男子高校生にみだらな行為をした。給食に薬物を混ぜた。自室で勉強中に男が押し入り包丁で刺した。介護疲れで母親を殺害。などなど。
こんな記事を読むと、ああ、またか、と思っても、その背後にある事情はまったくわからない。どんな込み入った事情があったのか、それはもしかしたら私達のほんの隣にいる人が関わっているかもしれないのだ。隣人である平凡な人が事件を起こす。角田は、一片の記事から発想し、あたかも見てきたかのように描き出し、まるでこの犯罪がそうであるかのように我々を錯覚させてしまうのである。事件の前にこそドラマがあったのだった。
傑作。