★★
ワインに纏わるアンソロジー。直木賞作家を揃えて話題を提供してくれるのはいいが、毎年たいして面白くない。いや、面白くないというのは語弊があるか。さすがに直木賞作家が競作しているのだからそれなりに読ませてくれる。が、どうも片手間というか、深みがないというか、要は、それぞれの作品を読んでもなんら響いてくるところがないのである。テーマが決められた短編というのもあるだろう。だけどワインの銘柄が出てきたところでもう用済みというのでは、少し安易過ぎるのではないか。
極上のワインのように極上の文章を読めるのだ。エピソードもわくわくするところがたくさんある。それなのに落ちがきちんとついてないものがあってちょっとガッカリ。
その中で佐藤賢一の「女王」は、へええ、と驚いた。1721年パリ生まれ、ジャンヌ・アントワネット・ポワソンの成り上がり方には恐れ入ったというところか。女のしたたかさに舌を巻く。