
- 作者: 山田正紀
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2007/09
- メディア: 単行本
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最初はどうなるかと思って読み始めたのだが、意外や意外、途中からものすごく面白くなってきて楽しめた。で、それなのに、この星三個半という微妙な評価はどうしてなのかというと、やはりミステリとしても警察小説としても冒険小説としても中途半端だったからだ。いやべつにジャンルにこだわっているつもりはないが、エンタメとしてはどこかしら山場というか盛り上がる箇所がほしい。という意味で、やはり三十年も前に書いて、そのまま本にまとめることもせずに放っておいた、というのも頷ける気がした。
話は単純。オーケストラ団員対警察官僚という図式。つぶれたオーケストラ団員が再建の資金調達のために詐欺を働く場面から始まる。その集団へ、なぜか一人の女が現れ、逆に団員達を強請る。“東京都民撤去作戦”の始まりだ。そして冒険小説にみられるような高揚感から徐々にフィナーレに向かって、自体は意外な展開をみせてゆく。謎も色々と散りばめられておりミステリとしても面白い。
ところが問題は序盤なのだ。意味不明な場面がいくつもでてきて読みにくいのである。用語が難しくて取っ掛かりに時間がかかるというのもあるが、文章が上手い山田正紀にはあるまじきリーダビリティの低さなのだ。ま、ここらへんが三十年前の若者なのだろうか。
そしてやはり欠点は、解説の日下三蔵氏も書かれていたが、「強いていうなら東京を無人にする計画とその動機がファンタスティックに過ぎる点が気になったのかもしれないが(中略)」ということに尽きる。ま、でも、これももっと可笑しな設定で書いている本も多いことを思えばどうっていうこともないだろう。
ということで、山田正紀ファンの方には一読をお勧めします。