赤と黒

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 久しぶりに感想でも書こうと思ってパソコンの前に座ったのだが、その前に9月新刊備忘録のリンク貼りを済ましてしまおうと思い、昨日までリンクがなかった楽天ブックスにいってみた。そして愕然としてしまった。光文社古典新訳文庫の「赤と黒 上」の書影が出ていて嬉しいと思ったのも束の間、赤い文字で 「売り切れました」となっていたからである。
 カラ兄がものすごく売れているは知っていたが、よもや昨日の今日で売り切れているとは思わなかった。さすが楽天ブックス。恐れ入ってしまった。ではアマゾンのリンクはどうかと検索してみれば、やはりちゃんとリンクされていて、こちらはまだ在庫があるようだ。
 「赤と黒」は小学生のころ、父に連れられて映画を観たことがあった。なぜ自分などを連れて行ってくれたのかわからないのだが、父はよくわたしを映画館に連れていってくれた。「ジャングルブック」を読みなさいと、面白い本を薦めてくれたのも父だった。世の中にはこんなに面白い本もあるのかと、子供ながら愕然としたものだ。そんな父の影響で本や映画の好きな子供だった。学生時代は毎週一人で映画を観にいったものだ。
 父は西部劇のような派手な映画も好きだったようだが、わたしはといえば、意味がわからなくても「赤と黒」、「アンナ・カレーニナ」や「風と共に去りぬ」のような綺麗な女性が豪華なドレスをまとって出てくる映画のほうが好みだった。ビビアン・リーの凄みのある美しさに度肝を抜かれたのもこのときだった。当時のロードショーは「戦争と平和」「シーザーとクレオパトラ」「嵐が丘」など、文学を映画化したものが多かったように思う。そういえばチャールトン・ヘストンの「十戒」とかも観たなあ。海が割れるシーンには、これまた度肝を抜かれてしまって、夢にまで見る始末であったが。
 話は逸れてしまったが、スタンダールの「赤と黒」は、中学のとき図書室で読んだ作品である。これが難しくてさっぱりわからなかった。そんなとき、当時、名作を漫画化した隔月刊誌があった。「ジュニアコミック」という、「りぼんコミックス」が6号目から改名された雑誌である。これには大変お世話になった。主な内容は、古典的名作の漫画版ダイジェストでもいえばいいのか、文学を漫画で表現するという高尚なもので、当時としてはちょっぴり大人になったような優越感を与えてくれるものであった。
 「赤と黒」も、あすなひろし先生が素晴らしい表現力で読ませてくれた。古典文学というのは、これほどまでに打ちのめされるものなんだろうかという衝撃を受けた覚えがある。乙女の夢が詰まったそんな雑誌を発刊してくれたことは、嬉しくもあり、あまりの豪華執筆人にこれまた驚愕したものであった。もちろん今でも表紙カバーは覚えているし、出来ることならこれらをもう一度手に入れたいと思っている。ちなみに好きだったのは、矢代まさこの「ジェーンエア」、牧美也子の「風と共に去りぬ」、北島洋子の「アンナ・カレーニナ」、もりたじゅんの「坊ちゃん」。別格で、あすなひろしの「嵐が丘」である。この後、中・高でこれらの作品を読んだのは推して知るべしである。                   
 そんなこんなで、今回、是非とも新訳で読んでみたかったのである。