OUT/桐野夏生

OUT 上  講談社文庫 き 32-3
OUT 上 講談社文庫 き 32-3
桐野夏生

講談社 2002-06

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OUT 下  講談社文庫 き 32-4
OUT 下 講談社文庫 き 32-4
桐野夏生

講談社 2002-06

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 ★★★★
 猛暑の中、汗だらだらでテニスなんてやったのが悪かったのか、目が腫れてきてコンタクトができなくなってしまった。何をするのも不自由でいけない。ドール遊びも出来なくなったのでリハビリを兼ねて本書を再読。(ということで星の評価はほとんど意味がないです。)
 バラバラ事件なんてどうでもよかったし、グロい描写は「げー」となるのは分かっているし、4人の女達にも大して興味がなかったので再読するのもアレだったのだが、ひょっとしたら彼女たちの境遇について、興味の対象が変わったのではないかと思って読んでみた。
 面白かったのはやはり、深夜、駐車場から弁当工場に向かう女達の素顔や工場内の描写。白い作業衣を着て、帽子にマスクとエプロンをつけた後、手と腕をブラシで洗って消毒液に漬けて、タイムカードを押して作業靴を履いて工場内へ入っていく様子。このあたりの描写は何度も出てきて、へええ、となって興味深い。その後のベルトコンベアで運ばれてくるものを詰める作業も面白い。深夜12時から朝の5時半までの立ちづめの過酷な仕事だ。よくこんな仕事ができるなあ、と感心したり、やればわたしでも出来るんだろうかと、いや無理だろ、と気持ちがあちこちに乱れて、読んでいてやっぱり面白い。
 そして一番気になった人物が、50半ば過ぎの寡婦、ヨシエ。「師匠」と仲間内で頼りにされていても、実際のヨシエはそんなに強いわけじゃない。寝たきりの姑の看護をして、細切れの睡眠で身体がぼろぼろになりながらも、お金のために頑張る姿は哀しい。このヨシエの姿は胸に迫るものがある。看護だけでも相当にきついのに、人はどこまで頑張れるのだろうか。ロボットじゃないんだから、こんなことやってたらいつか倒れるよ、と言ってやりたい。
 ああ、そういえば、終盤の雅子と佐竹と関係はやはり蛇足だとしか思えない。