世界人類がセックスレスでありますように/目黒条

世界人類がセックスレスでありますように
世界人類がセックスレスでありますように
目黒条

マガジンハウス 2007-07-19

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 ★★★★
 歌でも踊りでも考え方でも、すべて宇宙にくっつけてしまうような、ちょっと変なところのある銀河幼稚園に通わせることになった、同じ送迎バス停のママ達5人。約一名を除き、全員専業主婦である。膨大な暇と退屈をもてあまし、考えることといえばまずは自分の人生だ。もちろん母親なので子供のことは考えているだろう。だけど、ここに出てくるママ達は皆が皆、揃いもそろって子供のことを一番に考えるより、気にしているのはよそ様の世帯収入や服装や性格のことである。仲間外れにされないためには周りに気を配り、人にあわせなくてはならないのは世の常識だ。嫌いな人とも話をし、大して興味のない話題で盛り上がり、ランチに誘われればにっこり笑って食べたくないものにも付き合わねばならない。しかも皆、子供の数まで一人だという徹底ぶり。聞けば、セックスレス夫婦だから、らしい。そりゃいくらなんでも無理があるだろ。だけど皆にあわせるためには嘘も方便。へっちゃらよ。と、話はいよいよ過激になり、セックスレスの主婦が集まって「スコーピオの会」を結成し、ナンパを目的に夜の街に繰り出していくのだった。
 おお、わたしの好きなご近所ネタ。しかも専業主婦たちの胸の奥底に眠っているあれやこれやを思う存分に吐き出した井戸端会議風小説である。従来の小説の形式を取り払って、斬新なパターンで自由自在に書き上げた小説は、主婦たちの本音が思いっきりうかがえて楽しかった。とくにこの場ではちょっと浮いている、働く女性、演劇ライターの赤西敦子の真情の吐露が面白い。このあたりはついつい著者を思い浮かべてしまったのだが。能天気主婦をバッサバッサと叩き斬っていくさまが、いやにさっぱりとしていて小気味良い。といっても、わたしは専業主婦なので人知れず心の中で葛藤していたけど。
 帯によるとキーワードは「性の不在」だそうだ。「みんなが好きなはず(たぶん)のセックスの話題をセックスレスという風に反転させたらさらに面白いのでは?」そう思いついて書いたもの、らしい。が、いやはや、彼女たちの暴走はとどまるところを知らず、言動がどんどん過激になっていって、果ては幼児誘拐、殺人まで発展していったのには参った。さすがにこんな奇抜な出来事は現実にはあり得ないだろうと思うのだが、妙にリアリティがあるところが笑えない。ちょっと人物の名前を覚えるのが大変だったけど、身近にいる知り合いに会えるような楽しさもあって面白かった。
 子育て真っ最中で、退屈で鬱々としている方へお薦めです。

追記7/27

 「幻想の断片」のhibigenさん(id:hibigen:20070727:p1)読んでくださったので嬉しい。

追記8/26

 本日リンク元をクリックして遊んでいたら偶然にも目に入ったエントリーがあったのでこちらに載せておきます。
 「煩悩是道場」のうるるんさんの書評です。
 http://d.hatena.ne.jp/ululun/20070825/1188031489
 書評についての感想は別にないのですが、と言いますか、これを書いたのが女性だと思い込んでいたのでなんとなく新鮮な感じがして「なるほどー」とか思っていたのですが過去記事を拝見すると、どうも男性がお書きになっているふうで、そうしたら“性”についてのことばかりが目に付いてしまってどうも身の置き所がなくなってしまった。

本作が登場人物の心象風景と台詞によって構成されるといった戯曲の形式で書かれている為に小説というより劇作として読んでしまった。

 ということなので、この本についての書評は劇評に代わったと解釈して、そちらのほうが参考になるので載せておきます。
 ええと、それで。
 著者自身を彷彿させる「赤西敦子」が一番面白くかったです。この人がいなければ気の抜けたソーダのようなものでしょう。
 それから、エピローグのグダグダ感は面白かったけどなあ。なんでこれが面白くないんだろう。やっぱり「赤西敦子」で締めくくってもらわなければ。