きみはポラリス
三浦しをん
新潮社 2007-05-22
asin:4104541052
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★★★☆
恋愛をテーマに自分に「お題」を課して書いた短篇集。ということで、そこは三浦しをんが書く恋愛小説、なかなか風変わりな凝った話が多かった。好きな話とピンとこない話があって、評価が微妙になってしまっているが、引き出しの多い作家であることは確か。文章の巧さと構成でぐいぐい読ませてくれた。
一番好きな作品は最初の「永遠に完成しない二通の手紙」。これは素晴らしかった。体はどこも悪くはないのにいつでも床に伏せっている祖母が面白い、ホラーのような話の「骨片」も印象に残る。「うはね、まだ怒ってるのか」の出だしで始まる「森を歩く」の情景描写も巧い。“うはね”なんて、奇妙で可愛らしい名前をよく思いつくなあ、と感心しながら、汗をだらだら流しながら森を歩く話はこちらまでヒイヒイなりそうで楽しい。それから、ここでもロハスか、と思ったのが「優雅な生活」。しをん風ロハス小説ともいえる話だが、そりゃそうだよな、と喝采をあげるくらい楽しかった。で最後の「永遠につづく手紙の最初の一文」であるが、冒頭の話の続きともいえる彼らの高校時代の話。自分の心の底を見るのはこわいが、揺れ揺れに揺れ動いている自分の気持ちを認めたラストには感動。