家日和/奥田英朗

家日和
家日和
奥田英朗

集英社 2007-04-05

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★★★☆
 さらっと読めて面白かったです。以下雑感を書いておきますが、未読の方は読まれないほうがよろしいかと思います。では。

 42歳の専業主婦がネットオークションに嵌っていく様子が、まるで我が事のように可笑しい。といっても、わたしは出品まではしないが。この主人公は落札するという経験もなしにいきなり出品しようなどと考えるのだが、それって、普通の感覚なの?いやはや、昨今の専業主婦はさすがに進んでいるなあ。ラストの額に汗いっぱいのあたふたした様子も良かったが、もっともっと毒を入れてほしかったなあ。

  • 「ここが青山」

 ぷっ。「人間いたるところに青山ありだ」。一日に三度もこれを聞くとはケッサク。これは面白かった。14年間勤めた会社が倒産した、36歳の主人公。奥さんが働きに出ることになって専業主夫に。おお、そうか。こんなふうに主婦をやらなきゃいけないのか、と心底反省した。できないな、わたしには。

  • 「家においでよ」

 妻が出て行った。一人残ったダンナは、これ幸いとばかりにめいいっぱい自分好みの部屋を作ってしまう。インテリアはもちろんのことオーディオから液晶テレビまで、もろ世の男性の憧れの部屋だ。この居心地が良くなった部屋はいつしか会社の同僚たちの溜まり場となっていった。これは楽しかった。うちのインテリアもこんなふうにかっちょよくしたいなあ。生活感丸出しでどうにもならないけど。ああ、羨ましい。

  • 「グレープフルーツ・モンスター」

 内職で、DM用の宛名をパソコンで入力するアルバイトがあるのを初めて知った。わたしでも出来そうだと思ったが、小さな子供がいるわけじゃないし、一日中家にこもってパソコンに向かっているのも腰が痛くなると思ってやめた。それでなくたって、ネットばかりしていて腰を悪くしてるんだから。って、突っ込むところはそこじゃなかった。いくら若い人が担当になったからって、○○を見るっていうのはどうかと思う。羨ましすぎ。あわわ。

  • 「夫とカーテン」

 夫がいきなり品川駅前でカーテン屋をやると言い出した。ありゃあ。会社を辞めてどうたらこうたらという話が好きだなあ、奥田さん。面白いけど。商売がこんなに上手くいったら漫画の世界だよ。でも結構目の付け所が良かったりして笑えない。イラストレーターの奥さんがやきもきする姿が笑いをさそう。あらま。このフレーズが気に入った。

  • 「妻と玄米御飯」

 あるN木賞作家が、ロハスを推奨しているご近所の気取った夫婦の悪口(?)を書いた作品。妻も彼らに感化されて、地球に優しいエコロジーを家族に押し付けてくるのだが、それが嫌で嫌でしようがなく思っている主人公が、これをネタに一つ作品を仕上げるという話。だけど土壇場で腰が引けていくという情けなさ。結局、こういう言い訳めいたユーモア作品ほど詰まらないものはない。最後に白けてしまったな。
 とはいっても、さすがにバランス良く仕上がっており、日々の息抜きに読むのにはもってこいの作品集。おとぼけとユーモアが心地よい。