果断―隠蔽捜査2/今野敏

果断―隠蔽捜査2
果断―隠蔽捜査2
今野敏

新潮社 2007-04-27

asin:4103002522

Amazonで詳しく見る

楽天で詳しく見る

bk1で詳しく見る

 
 ★★★★
 前作『隠蔽捜査』では、東大法学部卒キャリアの竜崎伸也(46歳)はキャリア同士の対立には勝利したが、息子が麻薬に手を出した不祥事による降格人事で、警察庁長官官房の総務課長から大森署の署長に移動になった。今回も周りから変人を見る目つきで見られるものの気にすることもなく、管理職とはかくあるべきだという果断な処置をもってして事件にあたっていく。
 カ、カッコイイ。どこに行こうが軋轢や葛藤はあるのだし、人間関係の難しさはどんな立場になろうとも同じである。竜崎の凄いところは、常に理路整然としているところ。どんなに立場が悪くなろうが、正しいことは正しいと信念を持ってやってのけるところだ。道理をわきまえるという、道理に従って行動するというのは、口にするのは簡単だが実際に行動するのは難しい。それを淡々とやっていく竜崎は、やっぱり格好いい。
 当初反感を持っていた部下達も信頼を寄せていくのをは当たり前だろう。事件のほうも、そんな部下の一言から意外な展開になって竜崎を助けてくれる。読み終えてしまえば、あっさりと解決してしまった感があって、もっと書き込んで欲しかったかなという贅沢な思いが残ってしまった。次回はもう少し長い話が読みたい。
 ということで一番面白かったのは、事件の話より小中学校の教師やPTAとの防犯対策懇談会に出席したときの竜崎の意見だった。前回も教育論をぶっていたが、今回も地域社会の崩壊や学校の秩序の崩壊についての理路整然とした意見には唸ってしまった。教育や学習についての考え方は面白い。それでちょっと引用を。

 東大法学部卒は伊達ではないのだ。…
 他大学の卒業生や私大の卒業生にも優秀な者はいる。東大法学部というのは一つの目安に過ぎない。だが、最難関を目指して小、中、高と受験勉強を続ける忍耐力と集中力が重要なのだと竜崎は信じていた。

 これは激しく同意する。こういうのをもっと入れて欲しかったなあ。
 でも今回もとても面白かったです。