螺鈿迷宮/海堂尊

螺鈿迷宮
海堂尊
角川書店 (2006.11)
ISBN : 4048737392
価格 : 1,680円
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★★
 「チームバチスタの栄光」「ナイチンゲールの沈黙」に続く第三弾。続編というより、これは番外編といった感じか。
 テーマは終末期医療。主役は東城大学医学部三年、天馬大吉26歳。留年を繰り返すおちこぼれ。そんなある日、医者の道を諦めようとしていたところに、幼馴染みの新聞記者・葉子から桜宮病院への潜入捜査を命じられる。
 白鳥シリーズと思って読んでいたのに、いつまでたっても白鳥は出てこなくてヤキモキしたが、代わりに今回はピチピチした天馬が潜入先の病院でボランティアをしたりと、色々と妙なテンションで動き回って楽しませてくれた。が、やはり田口・白鳥コンビで引っ掻き回してくれないと不満が残る。ということで、さすがの白鳥も一人ではなんともしようがなく、今までの勢いがなかった。田口医師の出番は、残念ながら今回はナシ。その代わりと言えばいいのか、謎のままだった氷姫の存在が明らかになる。
 こないだ読んだ「ナイチンゲールの沈黙」を絶賛したのが(id:dekoponn:20061206)嘘のように面白くなかった。文章もストーリーもいまいち。というか、また体言止めを多用しているし、わけのわからん修飾語をごちゃごちゃ使って意味不明の文章にしているし。そのせいかストーリーも難解に感じる。もうちっと判りやすくシンプルな筋立てにできなかったのであろうか。話が混迷していくのは読んでいて疲れる。
 ミステリーとしては、もうこの作者には期待しないことにした。純粋にエンタメ作品として読んだほうがいいだろう。しかし、天馬大吉はまだしも、ドジで間抜けな新キャラでは、いらいらしても魅力を感じられないというのは問題ではないか。テーマである終末医療の問題点を描きたかったというのはわかるが、そこまでの展開がもたついて退屈。勢いは買うが、どうもこの作者は文体が安定しないというか、仕上がりに差がありすぎる。出だしはすこぶる好調だったし、文章も上手いと嬉しく思ったのだが、後が続かなかった。残念。シリーズでなければ途中で止めていたかも。