チーム・バチスタの栄光/海堂尊

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★★★★
 爽やかに締めくくられて高感度抜群のエンタメ小説。デビュー作にしては素晴らしい作品。
 心臓移植の代替手術であるバチスタ手術。という耳慣れない名称や医療専門用語がたくさん出てくる医療ミステリーだが、登場人物のコミカルさも手伝って気楽に楽しめる作品に仕上がっている。
 バチスタ手術を行うのは、米国帰りの天才心臓外科医というお定まりの設定。成功率は6割という高難易度の手術なのに、彼のチームは成功率100%の快進撃を続けているというすごさ。そのチーム内で、原因不明の術中死が3例も立ち続けに起こる違和感に、彼は内部調査を依頼する。これは医療過誤か殺人か。リアリティ溢れる大学の人間関係から始まって、迫真の手術場面に移っていく。
 調査役には、やはりお定まりのように出世競争から外れた万年講師である田口医師があたる。この主役の彼が抜群にいい味を出している。また、田口と禅問答のような会話をして楽しませてくれるのが、厚生労働省のぶっとんだ変人・白鳥。この二人が漫才のような会話をしながら謎を追ってゆく。
 とにかく面白い。しかし、小説を書きなれてないせいか、文体に癖があり、とくに医療について説明しているところに体言止めを多く使っているせいで読みづらかった。非常にスリリングで面白いところと、レポートを読まされているように退屈なところの差がありすぎて残念。軽く流している心理描写は物足りなく、文章の好みもいまひとつだった。だが、会話文の楽しさと、主人公をはじめとする登場人物のキャラがものすごく立っているため、非常に楽しく読めた。
 ミステリーとしての面白さはなかったが、娯楽小説という意味では、コミカルな雰囲気がたっぷりあって素晴らしかった。田口・白鳥シリーズとしてこれからも続けていってほしいと思う。非常に期待しております。(2006-02-12
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# snowkids99 『キャラ立ち作品ではあるものの、物語として今一歩という点での感想は同じです。同じキャラを使った次回作に期待しつつ、自分がいるフィールドと違う作品、医療現場以外での作品をどう書いていくのかな、が期待と不安といったところでしょうか。』
# でこぽん 『ものすごく面白かった『医龍』を読んだので、いま本書を読んだらもしかしたら違う感想になったかもしれません。バチスタ手術はすごかったですから。わたしはまた医療現場の作品を読んでみたいですね。』