ROMES06/五條瑛

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★★
 男ばかりが出てくる五條作品を読むのはただそれだけで、楽しい。ついでに銃なんか持ってくれて戦いがあれば、もっと楽しい。しかも世界最先端の警備システムVSテロだ。これは否が応でも期待は高まるというものだ。
 海上空港である西日本国際空港には、ROMES06という世界最先端の施設警備システムが導入されていた。このシステムの全貌を知っているのは最高責任者であり、天才にして変人の、成嶋ただ一人である。だけど、この警報装置が作動すればテロなんかイチコロだよ、というので日常的にはすることがない。周りはヤキモキするが、普段は愛犬ハルとじゃれまくっているといった按配なのである。なので、わたしが世界最先端の警備システムの素晴らしさがちっとも理解できなかったのは当然だろう。そんなのんびりとした読書のところへ、テロの予告文書が複数の部署へばら撒かれたので、いよいよテロとの壮絶な戦いが起こるのかと期待したら、成嶋以外の人物がバタバタと走り回っているだけだったという、つまんなさ。
 世界最先端の警備システムとテロという組み合わせだから、どんなにすごいことが起こるんだろうと興味津々だったが、事件にしても小粒だし、第一、敵キャラのすごさが全くなくて拍子抜けしてしまった。なぜ、この空港をターゲットにしたのかという理由は判らないわけではないが、テロを起こしてまでやり遂げたかったという動機としては説得力に欠ける。しかも、テロリストに協力していた内部の人間が最後に明かされるのだが、はあ?誰これ?で終わってしまった。
 仰々しい謳い文句にしては、あっさりと蹴りがついたラストといい、キャラ全体に魅力がなかったことといい、書き込んでくれている割に、薄味な小説だったとしか言えない。飛行場警備の話は、どうしても地味な話になるだろうから、少々派手にやってくれないとやっぱり退屈。その上、主役の成嶋がハルと遊んでばかりだったというのが、痛かったのだろう。
 うん。ハルはたしかに可愛かったんだよ。だけど、それだけじゃね。
 あ、それか、女?うん、そうかも。